山崎さん。
いつもいつも土方さんの命で私を守ってくれていたひと。自分は彼の手足なのだ、と誇らしそうに笑っていたひと。
斉藤さんのところへ伝達に行き、島田さんと3人で帰ったあの日。山崎さんは、『俺も新撰組を守るために他人の命を絶つことを厭わない。
それが俺の決めたことだ。俺にとって正しいと思うことだ。誰にどんな後ろ指をさされようと俺は副長を、新選組を、守る』と、そう言っていましたよね。
 とても、とても強いひとだと思いました。私はそんなあなたの横顔に惹かれました。月明りのもと、島田さんと武士としての生き方を話すあなたに。
 伏見奉行所では、戦況を知り得ない私にそれを包み隠さず教えてくれましたよね。『土方さんに報告せねばならない。君に伝えるためではない』少し無愛想にそういいながらも『君が出迎えてくれるとすこし安心する』と私に告げてくれました。少しだけ、はにかみながら。
 あなたがそう言ってくれてたから。
 わたしはあなたが帰って来ると思ってずっと待っていたんです。戸口で冬の寒さに震え、訃報に怯えながらも。あなたをむかえるために。
 帰ってきた隊士たちを労う一方あなたをずっと気にしていました。
あなたが良くない報せを持って帰って来たとしても、あなたが無事帰ってきてくれたことに安堵していました。
 いつしか私はあなたの持つ報せよりあなたの安否を気にするようになりました。
 ただ、ただわたしは、あなたを待っていたんです。
 あなたもいつしか、ただいま、と言ってくれるようになりましたよね。
 かならず帰ってきてくれたあなただったから、私が出て行ったときは、あなたが待っていてくれると思っていました。
 あなたが出迎えてくれると信じていました。
 なのにどうして、斉藤さんを呼びに走ったわたしをあなたは待っていてくれなかったのですか。大阪城で出迎えてくれなかったのですか。
 なぜ、江戸に、この屯所に、帰って来ないの・・・?
 私のせいで斎藤さんは羅刹となったのです。
 私は彼に迷惑をかけてばかりだというのに彼は私を気遣ってくれるのです。

 ああ、 でも
 あなたが、帰ってきてくれなくては
 わたしは、微笑むことすら
 できないんです。

 山崎さん


 あなたはどこにいったの